2010/7/27
posted by: 寺脇 研 | category: コラム, 映画, 演劇
劇団印象って、「いんしょう」という名の劇団だと思っていました。公演宣伝チラシの料金欄を見ると「@象の恩返し」という項目があり、「ご来場時受付にて身に付けた『象』確認で300円のお返しがあるゾゥ」だって。象のアクセサリーや象柄の服を身に付けていると割引になるらしいのです。
さらに、ホームページのアドレスを見ると、
http://inzou.heteml.jp/ 。そう、「いんぞう」と読むのでした。劇団のマークはエキゾチックな感じの象の絵で、下に Indian Elephant とある。印度の象、すなわち印象なんですね。この仕掛けに、すっかり引っかかってしまいました。
この劇団の公演『霞葬(かすみそう)』を、吉祥寺シアターで観ました。作・演出の鈴木アツトさんが招待してくれたのです。わたしのやっている「カタリバ大学」の母体NPO法人カタリバの代表・今村久美さんと鈴木さんが慶應藤沢キャンパスSFCの同級生という関係で、初めてこの劇団の芝居に足を運ぶことになりました。これも縁というものです。
鈴木さんは、大学時代に映画や演劇をやっていたそうですが、一旦は企業に就職しました。しかし演劇から離れられずに退職し、演劇活動を続けているのだといいます。
『霞葬』は、神の世と人の世の間を行き来しながら死ぬことと生きることの意味を感じさせる夢のような舞台でした。たぶんわたしは、この劇団の次の芝居も、そのまた次の芝居も観ることになるでしょう。ある劇団と付き合うという意味は、そういうものだと思っていますから。
「印象」を「いんしょう」と思い込ませるような遊び心、チラシやホームページに明らかな楽しいセンス、そうしたもののある劇団の芝居が面白くないはずがありません。また、『霞葬』は「日韓国際交流公演」です。韓国の舞台女優ベク・ソヌさんが、この劇団の前作『匂衣(におい)』に続いて客演しています。最初は挨拶程度の日本語しかしゃべれなかったベクさんが、公演の稽古を通してみごとに言葉を操れるようになったそうです。こうした開放性も好感が持てます。
井上ひさし、つかこうへいと大きな存在を次々と失った今年の日本演劇界ですが、新しい動きも、ちゃんと始まっています。
寺脇研 今週の映画レビュー
◎=ぜひお薦め ○=余裕があれば観てください ●=わたしはウンザリ
| シュアリー・サムデイ |
|
きれいごとに終わらぬ覚悟はいいが、まだ徹底していない |
| 借りぐらしのアリエッティ |
○ |
少数のもの、異形のものをわれわれがどう扱ってきた(扱っている)かについて、深く考えさせる |
| おのぼり生活 |
○ |
夢を抱いて上京する者は多いが三十路近くなって漫画家を志す主人公の切なさは格別。それをていねいに描いて出色 |
2010/7/20
posted by: 寺脇 研 | category: 映画, 漫画
少年サンデー連載の人気野球漫画『MAJOR』(満田拓也・作)が先日、747回で最終回を迎えました。1994年の連載開始以来、実に16年の大河連載だったわけです。単行本は78巻を数え、04年からはNHK教育テレビでアニメシリーズとしても放映されています。08年には劇場用アニメ『劇場版MAJOR メジャー 友情の一球』(加戸誉夫監督)も製作されました。また、i-MODE用、Wii用、ニンテンドーDS用のゲームにもなっています。
連載が始まったとき、主人公の茂野吾郎はまだ幼稚園児だったのです。『MAJOR』という題名から、この子がメジャーリーガーになるまでを描く物語であることが察知され、長い作品になることは予想されましたが、まさかここまでの大長編になるとは、さすがに思いませんでした。
当時メジャーで活躍する日本人選手など、考えられませんでした。野茂英雄投手が単身アメリカに渡りメジャーに挑戦して大成功する1年前のことです。日本人選手がメジャーで活躍する夢を架空の物語にする作品だと思っていたら、様相はすっかり変わってきました。漫画の着想が、現実に先行していたのです。吾郎が高校を卒業してアメリカのマイナーリーグに身を投じメジャーへの挑戦を本格的に始めた頃には、既にイチローや松井が活躍していました。
ただ、この漫画のすばらしいところは、吾郎がメジャーリーガーとして一人前になるまでの野球人生を克明に追っていることです。リトルリーグ、中学野球、高校野球と、それぞれの段階が手に汗握る野球ドラマになっています。そこで結ばれる固い友情が、成長しても続いていくのです。
また、家族の絆を貫き通しているのもこの作品の大きな特徴です。吾郎の実の母は早くに亡くなり吾郎を可愛がる幼稚園の先生と父親が結婚を決意した矢先に試合中の事故で父は急死します。先生が養母となって吾郎を育ててくれるうち、亡き父の親友である選手と結婚し、吾郎は本田姓から茂野姓に変わりました。
母を亡くし、父を亡くし、養母に育てられ、その結婚で義父ができ義理の弟と妹ができる… ドラマティックな家族関係に育った吾郎が、結婚して家庭を持ち娘と息子、二人の子どもに恵まれる展開は、ホームドラマの側面をも持っています。
16年間読み続けて、いろいろな形で感動させてもらいました。感謝したいと思います。こんな漫画、なかなか出てこないでしょう。
寺脇研 今週の映画レビュー
◎=ぜひお薦め ○=余裕があれば観てください ●=わたしはウンザリ
| 小さな命が呼ぶとき |
|
家族愛の話が好きな人にはいいだろうが… |
| グッドモーニング・プレジデント |
◎ |
コメディの中に国の指導者とは何かを改めて考えさせてくれる |
| 必死剣鳥刺し |
|
殺陣は凄いが話の流れが消化不良 |
| 恐怖 |
● |
恐怖の種が意味不明では怖くならない |
| 私の優しくない先輩 |
● |
ヒロインのナレーションだけに頼った展開ではドラマにならない |
踊る大捜査線 THE MOVIE 3
ヤツらを解放せよ! |
|
シリーズものの楽しさが不十分。描かれる犯罪も不快 |
2010/7/13
posted by: 寺脇 研 | category: 映画, 激弾BKYU, 演劇
友人たちの出る芝居を2本、立て続けに観ました。
まず、野口和彦が主宰する演劇活動「青蛾館」の25周年記念公演『青ひげ公の城』。これに、このコラムでも「カテゴリー」欄のインデックスになるほどおなじみの劇団、わが激弾BKYUの役者たち東野醒子、影山晃子、有友正隆の3人が客演しています。前にもご紹介した新しい劇場「座・高円寺」での上演というのも、この芝居を身近に感じさせました。
もともとは昭和後半の代表的芸術家・寺山修司の書いた戯曲です。寺山修司(1935〜1983)は、演劇実験室・天井桟敷を主宰し劇作家、演出家、俳優などの立場で演劇に関わるとともに、詩、短歌、俳句、作詞、エッセイ、小説、評論、映画、写真… と実に多彩な分野で活動しました。
わたしの青春時代、寺山修司の詩、短歌、文章、映画を常に意識していました。実験的色彩の強い映画『書を捨てよ町へ出よう』71、『田園に死す』74、そして娯楽映画に挑んだ傑作『ボクサー』77が忘れられません。天井桟敷に通うところまではできませんでしたが、この『青ひげ公の城』は、79年渋谷・西武劇場(現在のPARCO劇場)での初演を観に行った記憶があります。
BKYU、寺山修司と自分にとって重要なものと密接につながる青蛾館版『青ひげ公の城』を、感慨深く、また楽しく観ることができました。
もうひとつは、演劇制作集団ハイライトシアターの第1回公演『ゴキブリの作りかた二〇一〇』です。こちらは、中野富士見町にあるPlan-Bという小劇場での芝居でした。脚色の、いまおかしんじはピンク映画の監督、演出・出演の伊藤猛、出演の本多菊雄、川瀬陽太、ほたる、伊藤清美などのメンバーはピンク映画の役者たち。ピンク映画関係のイベントや韓国でのピンク映画祭などでよくご一緒する人たちです。
これも、昭和の劇作家、脚本家であり俳優もしたし小説も書き映画も撮った内田栄一(1930〜1994)の戯曲を現在に甦らせる試みです。ハイライトシアター http://hilitetheater.jimdo.com/ のホームページを見ると、今回の上演が内田さんへオマージュを捧げるためのものであることがわかると思います。わたしが「内田さん」と呼ぶのは、映画祭などでご一緒していろんなことを教えていただいたのと、その生きる姿勢を深く尊敬しているからです。
晩年の2本の映画監督作『きらいじゃないよ』91、『きらいじゃないよ2』92には、六十代の人とは思えない若々しい感性がありました。この2作に主演していた伊藤猛と伊藤清美が、今回の公演の軸になっています。その意味で、この舞台もわたしにとってはさまざまな思いを甦らせるものになりました。
寺脇研 今週の映画レビュー
◎=ぜひお薦め ○=余裕があれば観てください ●=わたしはウンザリ
| 仁寺洞スキャンダル |
|
韓国映画らしい速くて強引な展開 |
| ロストクライム 閃光 |
○ |
日本映画の社会派サスペンスの持ち味がここにはある |
SR サイタマノラッパー2
女子ラッパー 傷だらけのライム |
○ |
群馬の田舎町で生きる二十代後半女子の意地が切ない |
| ザ・コーヴ |
● |
映画というより思想それも排斥思想の宣伝 |
2010/7/6
posted by: 寺脇 研 | category: 映画
まず、お詫びです。先週の映画欄にぜひとも書かなければならなかった映画『アンダンテ 〜稲の旋律〜』を落としてしまっていました。皆さんにお薦めしたい作品だったのに、東京東中野のポレポレ東中野での劇場上映は7月2日で終わってしまいました。
ただ、全国での巡回上映は続いています。ホームページ( http://www.ggvp.net/andante/ )を開いて、「上映情報・日程」のところを見てください。青森県から沖縄県まで、各地での上映予定がわかります。お近くで上映があったら、観てください。がっかりはさせません。
この映画は、芸術としてすぐれたものになるのを狙ったものではありません。農業のすばらしさ、そして近代と呼ばれた経済的価値最優先の時代が行き詰まり新しい価値観を確立する必要のある現在、注目すべき産業であるということを強く印象づけます。親の期待の重圧に負けて大学を中退しフリーターから引きこもりの生活になっていた女性が農業に接することで自分を取り戻すのにも納得がいきます。
映画には、文化芸術としての力以外に人々の考えを変えていく効果があります。先週、観光庁の溝畑長官に同行して北京へ行ってきました。中国人観光客を日本に誘致するための動きの一環です。観光庁では、大きく報道されたとおり中国から日本を訪れる際の個人取得ビザを取りやすくするように制度変更し、観光を促進しています。
わたしが同行したのは、中国人の日本観光を進める上で映画が大きな役割を果たすことが認識されるようになったためなのです。日本では『狙った恋の落とし方』という題名で公開された(6月22日コラムの映画欄参照)中国映画『非誠勿擾』(フォン・シャオガン監督)は、08年に中国で公開され興行成績1位の記録を塗り替え劇場で2千5百万人、DVD視聴を含めると3億人以上が観たといわれる超大ヒット作になりました。
この映画は北海道で大規模なロケを行っており、3億人の中国人がそれを観た結果、中国から北海道への観光客が激増したのです。これに目を付けた中国映画界が、北海道だけでなく日本各地でロケをしたいという要望を募らせ、日本側も大歓迎する動きが急速に進んでいます。
実際にロケのお世話をするのは、わたしが理事長を務めるNPO法人ジャパン・フィルムコミッション( http://www.japanfc.org/ )に参加している各地のフィルム・コミッションということになります。そんなわけで、わたしが観光庁長官と一緒に北京を訪ねることになりました。
現地でいろんな方々と話し、たしかに日本に対する関心が高まっているのを感じました。過去の歴史のせいで対日感情が悪いと言われてきた中国で、こうした傾向が現れたのはうれしいことです。しかも、それが映画をきっかけにして、というのがいいですね。この方向性がもっと進展してほしいと願っています。
寺脇研 今週の映画レビュー
◎=ぜひお薦め ○=余裕があれば観てください ●=わたしはウンザリ
| アンダンテ 〜稲の旋律〜 |
◎ |
農業を描きわれわれの社会の新しい生き方を考えさせる |
| トロッコ |
|
台湾人の善意に甘える一方の日本人母親に恥ずかしい思い |
| ザ・ロード |
|
都合良く終わってしまう幕切れに不満 |
| バウンティー・ハンター |
● |
アメリカ映画らしい騒々しい悪ふざけ |
| ソフトボーイ |
◎ |
田舎の高校生たちが自分のいいところを見つけていくのがいい |
2010/6/29
posted by: 寺脇 研 | category: その他, 映画
22日火曜。CS放送の番組で座談会。いわゆる保守派と呼ばれる人たちばかりの顔ぶれにもかかわらず、メンバーとして声がかかったのは座の中心となる西部邁先生の計らいによるものです。そしてわたしが喜んで参加したのも西部先生とご一緒できるからに他なりません。それほどに、西部邁という人の深い教養と鋭い物の見方を尊敬しているのです。
この日も、議論を格調高い方向に導いたのは西部先生のいくつかの発言でした。番組収録の終わった後は、先生を囲んでのお酒の席です。これがまた楽しい。談論風発のお話を伺いながらおいしい酒をいただきます。結局、座談会が3時間、酒席が6時間にも及びました。
大学などで教わった関係ではありません。たまたま同じ酒場で同席する機会が多く、そんな中で何かとお話を聞いて、この人に教えを乞いたいと思うようになりました。 先生の方でもこいつに何かを教えてやろうという気になったのでしょう。以来、「師弟」関係が続いています。
学校の巡り合わせなんかでなく、自分自身で思い定めた師匠がいる、というのはいいもんですね。落語家さんなどの気持が、よくわかります。
24日木曜。7月末発売の雑誌「映画芸術」最新号の座談会で長谷川和彦監督とご一緒しました。こちらは、座談会3時間、酒席4時間。
長谷川監督は映画界の先輩で人生の先輩、わたしにとって、おっかない兄貴です。実際、昔から、かわいがってもらっています。
元アメフト選手で体も声もデカい長谷川監督のあだ名はゴジラ。われわれ後輩は敬愛の念を込めて「ゴジさん」と呼びます。
久しぶりに会ったゴジさんは、この日もすこぶる元気でした。いろんな話を聞き、お前しっかりしろよ、と叱咤激励されるうち、新宿の夜は更けていきました。頼りになる兄貴分を持つのも、またいいもんですね。
寺脇研 今週の映画レビュー
◎=ぜひお薦め ○=余裕があれば観てください ●=わたしはウンザリ
| チョルラの詩 |
○ |
話はありきたりだがソウル五輪前夜の韓国の田舎を描くことに挑戦したのは一見の価値 |
| 瞬またたき |
● |
このヒロインにはついていけない |
| マイ・ブラザー |
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きちんと作られているのにラストの逃げにがっかり |
| さんかく |
◎ |
傑作青春映画誕生。ダメ男とダメ女がいとおしい |