映画評論家、寺脇研のブログ。オススメ映画や、人生の楽しみ方をお届けします。毎週、火曜日更新!

寺脇研の人生タノシミスト

2010/3/9

寺脇研の落語ナビ 開催決定!

posted by: 寺脇 研 | category: コラム

1月26日と2月2日のコラムでご紹介した「寺脇研の落語ナビ」、2回目と3回目の開催が決定しました。

第2回は3月14日日曜の1500〜1630、「深川落語会 春の部 ”熊さん八っあん小津さん”」という落語会です。会場は地下鉄門前仲町駅から徒歩2分の深川東京モダン館(江東区門前仲町1−19−15 TEL.03−5639−1776 http://machimegu.jp/spots/603 )。

出演は三遊亭円橘、三遊亭きつつき、三遊亭好吉。深川在住の円橘師匠が、古典落語『紺屋高尾』をたっぷり聴かせてくれるはずです。そしてわたしもゲスト出演します。落語をやるのかって? そうじゃありません。深川は小津安二郎監督ゆかりの土地でもあります。そんなわけで映画ファンで知られる円橘師匠と飲み友だちのわたしとが、「小津映画と落語」のトークをやるのです。

料金は当日2000円(前売り1500円)。前売りは深川東京モダン館にお問い合わせください。誰でも参加していただいて構いません。めいめいで入場し、落語会が終わった後「落語ナビ」参加者だと名乗ってくだされば、出演者を囲んで落語の話(映画の話も)をする懇親会に出られます。

前回の会場だった巣鴨スタジオフォーもユニークな会場で、巣鴨の庚申塚という珍しい場所へ行く楽しみも味わってもらえたと思います。今度は深川情緒をどうぞ。深川東京モダン館は昭和7年に建てられ国の登録有形文化財に指定された歴史的建造物「旧東京市深川食堂」を使った施設です。江東区の観光案内スペースもあり、建物自体が見ものにもなっています。

落語は、こうした周辺部分と一体となって楽しめる芸能です。ただ無闇にホールを駆け回ってお目当ての人気落語家を追いかけているだけではもったいない。噺の中に出てくる江戸や古い東京に思いを馳せながら、春のひとときを過ごすのもまたいいものです。終演後の会では、落語の背景となる知識を得てもらえるようナビするつもりです。初めて落語を聴く、という人にも、その魅力を知っていただけると思います。

「落語ナビ」第3回は4月9日1900からの予定ですので、また改めてご案内します。

寺脇研 今週の映画レビュー

◎=ぜひお薦め  ○=余裕があれば観てください ●=わたしはウンザリ

花のあと 人間の誇り、意地、情愛を格調高く描ききった秀作時代劇
海の金魚 けなげに自分の生き方を貫こうとする少女二人がまぶしい
渇き 力のこもった映画なのだが描く世界が独りよがりにしか見えない
月と嘘と殺人 町の交番が舞台なのは面白いが話の底が浅い
猿ロックTHE MOVIE テンポが急の部分は悪くないが緩の部分が不満
過速スキャンダル 丁寧に作ってあるがテーマはありきたり
真!韓国映画祭
飛べ、ペンギン
韓国社会の諸問題を軽妙にドラマ化した異色社会派映画
真!韓国映画祭
今、このままがいい
巧妙に組み立てられた物語の素晴らしさに脱帽。女性たちのひたむきに生きる姿を描き今年屈指の傑作

2010/3/2

こまつ座『シャンハイムーン』

posted by: 寺脇 研 | category: 映画, 演劇

東京新宿の紀伊國屋サザンシアターで上演中の井上ひさし作こまつ座公演『シャンハイムーン』を見ました。題名の通りシャンハイが舞台で、中国を代表する作家魯迅が主人公です。彼とその妻、彼を心から尊敬し彼のために命懸けで奔走する4人の日本人が登場人物、二幕芝居ながら場面は一つだけというこじんまりした話ですが、描かれるテーマはとても大きい。 また井上作品らしく喜劇仕立てで楽しませてくれる一方で、極めて重く大切なメッセージを含んでいます。

時代は1934年。31年の満州事変、続く上海事変が一旦収束し37年から8年間に及ぶ日中戦争が始まる合間の時期、といっても日本の中国侵略の姿勢は明確になっていました。 日本に留学し日本文化の価値を認め、名作「藤野先生」にもあるように優れた日本人に対して敬意を持つ魯迅は、しかし日本のアジアに対する姿勢を強く批判し、また同時に腐敗した中国政府を厳しく糾弾していました。

そのために日本の一部勢力だけでなく中国政府からも狙われていたのです。 そんな状況の魯迅を必死で守った日本人がいたのも事実。その甲斐なく魯迅は36年に病死し戦争は始まります。

それでも魯迅や周囲の日本人がやったことには意味があった、とこの芝居は主張しています。 どんな状態でも最後の最後まで戦争を阻止するため、また人々の幸せのために努力することは尊い。特に次の世代の若者たちに希望を託すことが大切なのだと。

現在、日本人の対中感情、中国人の対日感情は決して良好とは言えません。そんなときだからこそ、魯迅たちの物語に目を向けるべきではないでしょうか。

『シャンハイムーン』は紀伊國屋サザンシアターで今も上演中。その後全国各地での公演も予定されています。詳しくは、こまつ座ホームページで。

寺脇研 今週の映画レビュー

◎=ぜひお薦め  ○=余裕があれば観てください ●=わたしはウンザリ

コトバのない冬 狙いはわかるがそれが上手くいっていない
新しい人生のはじめかた 洒落たラブストーリーだけど単にそれだけ
インビクタス負けざる者たち 丁寧に作ってあるがテーマはありきたり

2010/2/23

秋田県横手市をTwitterで街おこし!

posted by: 寺脇 研 | category: コラム, その他, 映画

今年も、あきた十文字映画祭に行ってきました。【 http://www.akita-jcf.net/ 】

昨年10月20日のコラムでご紹介した中国人留学生・任書剣さんが監督した初めての劇映画『私の叙情的な時代』も、上映作品のひとつとして招待されています。上映後のトークに、彼を日大芸術学部大学院で指導した者として任監督と一緒に舞台に上がりました。映画の最後のクレジットタイトルに、他の先生方と共に「芸術顧問」としてわたしの名前が出ています。「芸術顧問」とはなんとも偉そうで恥ずかしいのですが、任さんに聞くと中国語ではそんなにたいそうな意味ではないらしく、少し安心しました。

実は『私の叙情的な時代』には、日本の人気俳優・伊勢谷友介がワンシーン友情出演してくれています。中国人留学生の自主映画に出てくれるなんて、伊勢谷さんはすばらしい人、でも、どうして出てくれたんだろう、と思って任監督に水を向けると、「先生が決めてくれたんじゃないですか」。え? わたしが?

思い出しました。4年前、06年の十文字映画祭に、任監督の作ったドキュメンタリー映画『北朝鮮の夏休み』をわたしが推薦して上映したのでした。中国人は北朝鮮に旅行ができます。その立場を生かして観光という名目で入りカメラを回して作った映画で、北朝鮮国民の普段の姿がそのままに描かれます。

そのとき、根岸吉太郎監督の『雪に願うこと』が上映され、出演者の伊勢谷さんもゲストで招かれていました。夜の飲み会のとき、わたしが伊勢谷さんに任さんを紹介し、彼の撮る映画のシナリオを読んで気に入ったら出演してやってくれないか、と頼んだのでした。わたし自身、伊勢谷さんとは初対面だったのに、酒の勢いもありご自分も映画監督の経験があり自主映画に理解のありそうな彼に無理な頼みをしてしまいました。

その後、シナリオを読んだ伊勢谷さんから出演してもいいという返事があったということなのです。そんなだいじなことをすっかり忘れてしまっていたのですから、酒は恐ろしい。それにしても、なあんだ、わたしもちょっといいことしてるじゃないか、と自分を少しだけ見直しました。

ところで、今年1月26日のコラムにも書いた通り、わたしはツイッターをやっています。あきた十文字映画祭のことをツイッター上でつぶやいたら、#yokote というハッシュタグで反応がありました。元は十文字町の映画祭だったのが、合併で横手市に。横手は今、横手焼きそばや韓国ドラマのロケなどで観光客急増中、それに拍車をかけるために @YokotterというTwitterで街おこし!の運動が始まっているのです。

横手に関係するつぶやきには、@Yokotterが即座に反応する仕組みらしい。のぼりやチラシも目にしました。聞けば、他の地域でも同種の取り組みがあるとのこと。ツイッターにこうした活用法もあるんですね。

寺脇研 今週の映画レビュー

◎=ぜひお薦め  ○=余裕があれば観てください ●=わたしはウンザリ

団地妻
昼下がりの情事
日活ロマンポルノのリメイク。最近の日本映画が忘れがちなていねいな作りに満足
食堂かたつむり けばけばしさと話の寸断に閉口するも、クライマックスには少々感動
代行のススメ 田舎の家族の暮らし方を巧みに織り込んで見どころあり
茜さす部屋 アラサー派遣女子の等身大の姿は描けているが作りがいささか稚拙
パレード 話の運びは悪くないが、ラストの作りに疑問
人間失格 時代や作家の感性を捉えたことには満足。描写の重厚さが生きる

2010/2/16

『カミダンゴ』〜激弾BKYU25周年記念〜

posted by: 寺脇 研 | category: 映画, 激弾BKYU, 演劇

激弾BKYUとわたしとの深い関係は、このコラムのカテゴリーに「激弾BKYU」が項目としてあるように、読者の皆さんはご承知だと思います。カテゴリーから検索してくだされば、彼らと共にやってきたことの数々がおわかりいただけるでしょう。

そのBKYUの25周年記念公演とあれば、わたしが入れ込んでしまうのも当然です。初日の3日、中盤の9日、千秋楽の14日と、3回も観に行きました。そして打ち上げ。6日には打ち上げにだけ参加したので、都合4回。千秋楽の晩は、8時に始まったのが延々と続き、わたしがへたばって午前3時に帰ったあとも、まだ宴は続いたようです。

千秋楽は、わたしの友人たちもたくさん観に来てくれました。3時からの舞台が5時前に終わり、誰言うともなく10人全員が近くの蕎麦屋の二階で杯をあげました。終わったばかりの芝居がもたらしてくれた感激や興奮を語り合うためです。この芝居『カミダンゴ』には、「演劇の力」とでもいったものがあふれ、それを観る者に強烈に印象づけます。芝居は地球を救う! という強い意思が、心をうつのです。

座長で作・演出の酒井晴人がそのことを訴えかける物語を作り、看板女優の東野醒子が言葉で観客に伝えます。ラストの長いひとり芝居的場面が、すべてを物語っていると言えるでしょう。もちろん、阪本葵、蔵重美恵、影山晃子、有友正隆、大高健二、小林博、今村有希のメンバーたちが、それを支えています。

3年前からBKYUを応援してくれている教育、福祉事業の星槎グループ会長である宮澤保夫さんは、星槎の通信制高校の生徒たちや保護者にぜひ見せたい、とグループの持つ八王子の劇場での『カミダンゴ』公演を宣言してくれました。「演劇の力」が人間の生きる力のすばらしさを感じさせることに注目したようです。

25周年記念公演を終えたBKYUは30年、さらには50年に向けて新たな歩みを始めました。酒井は「コント八ツ場ダム」というグループでの活動。東野、影山は7月の青蛾館公演『青ひげ公の城』、蔵重は8月のOne on Oneオリジナルミュージカル公演が控えています。ロック歌手でもある有友は3月6日のライブ、小林はNHK「龍馬伝」出演、今村は映画出演が続きそうです。

わたしも、彼らとの付き合いがさらに深くなっていきそうです。

寺脇研 今週の映画レビュー

◎=ぜひお薦め  ○=余裕があれば観てください ●=わたしはウンザリ

霜花店(サンファジョム)
運命、その愛 時代劇描写に手一杯で人間ドラマが不在
COACH コーチ
40歳のフィギュアスケーター 狙いは面白いがコラージュ風に構成した物語に盛り上がりが欠ける

2010/2/9

芝居の伝える真実〜平田オリザ・激弾BKYU〜

posted by: 寺脇 研 | category: 激弾BKYU, 演劇

久しぶりに演劇の話をしましょう。

年始に観たのは平田オリザ作・演出の青年団公演『カガクするココロ』『北限の猿』の2部作です。どちらも、猿を飼育したり菌を培養したりさまざまな実験をしてDNAを研究している某国立大学の生物学研究室が舞台です。

同じ設定に見えながら登場人物の名前もキャラクターも全く違っているのが平田戯曲のマジック。まるでパラレル・ワールドのような二つの世界を楽しむことができます。演劇には珍しく、猿の遺伝子を操作するという行為の生命倫理上の問題や猿と人間との違いは何かといった科学的テーマがこめられているのが特徴です。いわば、「カガクする演劇」。

でも、やはり最大の魅力は学生や大学院生それを取り巻く人々といった人物の造型です。いろんな人間がいて、いろんな考え方や行動をしています。そしてそれらすべてが、単純に否定されることなく示されるのです。人間っていいなあ、人間って面白いなあ。平田さんの芝居を観るといつもそういう気持になります。

そして、わが激弾BKYUです。右の「カテゴリー」欄に「激弾BKYU」という項目があるくらいわたしとは切っても切り離せない劇団が、結成25周年記念公演『カミダンゴ』を2月3日から14日まで中野の劇場MOMOで上演しています。【詳しくは http://www.bkyu.com/

初日に早速観に行きました。25年の集大成が、そこにはありました。廃屋となった劇場を舞台にして霊たちが芝居に挑む構成の中、9人の劇団員それぞれが個性をみごとに発揮しています。そして、25年の間に演じたいくつもの戯曲の科白をちりばめながら話は進みます。

伝わってくるのは、芝居ってすばらしい、芝居は世界を救う、という強烈なメッセージです。もう若くはない25年前の若者である役者たちが若い世代へ向けて人間や愛を信じろ、と訴えているかのようです。芝居バカ9人からの、身をもって伝える真実、とでも言えるでしょうか。

座長の酒井晴人は、観客へ向けての「25年のごあいさつ」という一文をこう結んでいます。「25年の成果は1つ。たくさんの仲間ができた。『人生とはたくさんの仲間を増やすことだ』、死んだオヤジの名言」

わたしも彼らの仲間であることを誇りに思います。

寺脇研 今週の映画レビュー

◎=ぜひお薦め  ○=余裕があれば観てください ●=わたしはウンザリ

すべては海になる 文学と映画のコラボは面白いが…
ゴールデンスランバー 展開に無理があるために話に引き込まれない
作戦 スピーディな経済活劇だが株操作のテーマが映画ではうまく表現できていない
ユキとニナ 異文化間の距離というものに対する考え違いがあると思う

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